iSCSIはNASとは異なり、複数のマシンから同一ボリュームを共有することはできないと前述した。しかし、TeraStation ISはディスクあるいはRAID構成されたRAIDアレイを複数のボリュームに分割して管理、提供することができる。それぞれのボリュームは異なるiSCSIイニシエータに接続できるため、複数のPC/サーバに対して1台のTeraStation ISでストレージを提供することが可能だ。ちなみに、同時接続可能なイニシエータ数は10となっている。
1つのディスクあるいはRAIDアレイを複数のボリュームに分割するには、論理ボリュームマネージャ(LVM)を有効にする必要がある。LVMはほかにもボリュームの拡張を提供し、より高度な運用を可能にしてくれるが、LVMの有効/無効を切り替えると既存のデータはすべて削除されてしまうため、導入時に決定することが望ましい。パフォーマンス的にはLVMを使用しないほうが有利なので、利用状況を考慮して検討すべきだ。
TeraStation ISのiSCSIボリュームは、デフォルトの状態では認証がなく、どの機器からでも接続できるが、ボリュームごとにパスワード、IPアドレスの制限を設定することができる。また、それと同時にiSCSIイニシエータ側にもパスワードを設定し、双方向で認証を行う相互認証を利用すればより安全なデータ運用が行える。もちろん、メンテナンスなどについては実績あるTeraStation PROシリーズと同様のものを備えている。
TeraStation ISにはラックマウント型も用意されており、サーバのバックアップ用ストレージとして非常に低価格で導入できる。また、使用されているテクノロジーはTCP/IPネットワークと基本的なローカルドライブであり、ハードウェアとしても特別な機器を必要としない。「iSCSIは初めて」という人であっても、概念さえ理解すれば既存技術の知識で十分対応可能だ。
これはつまり、iSCSIのチューニングにはTCP/IPネットワークのチューニング知識が有効だということを意味している。最もシンプルかつ効果的な例としては、iSCSI機器専用のネットワークを別に構築することが挙げられる。PCサーバのほとんどは2つ以上のLANアダプタを搭載しているし、増設用の1000BASE-Tネットワークアダプタも比較的安価に購入可能だ。もし、iSCSI機器をホストPCと1対1で接続するのであればPCと直結することでさらに遅延要素を排除できる。
実際に専用ネットワークを構築してTeraStation ISの性能を検証したところ、RAID 5、RAID 10において40Mバイト/秒以上の読み出し速度をコンスタントに出しており、一般的なUSB外付けHDDよりも転送速度で有利なことが見てとれる。ドラッグ&ドロップによるファイルコピーでも4Gバイトの巨大ファイルを1分40秒程度で読み出しており、実用面で十分な性能と言える。
このほか、iSCSI機器ネットワーク側はWeb管理画面用のHTTPプロトコル、iSCSIプロトコルなど非常に限定的な通信でよいため、ファイル共有などブロードキャストをともなう不要なサービスの通信を止める、ルーティングを行わないなど、比較的大胆なチューニングが可能だ。もちろん、TeraStation ISは9694バイトまでのJumbo Frameに対応しており、ギガビットネットワークの効果をさらに高めることができる。
ほかにもTeraStation ISで信頼性の高いデータ保護とパフォーマンスを両立する運用法がある。TeraStation ISの1つのボリュームが、PCから1つのローカルディスクとして見えることを利用し、RAIDを多段的に構築する方法だ。
Windowsではダイナミックディスクという名称でソフトウェアRAIDがサポートされている。Windows Server 2003やWindows XP Professionalなど、iSCSIイニシエータを標準搭載していないOSでは正式にサポートされていないものの、近々登場するWindows Server 2008ではiSCSIイニシエータを標準搭載しており、TeraStation ISをダイナミックディスクに変換してソフトウェアRAIDを利用することができるのだ。
RAIDを多段構築する際は目的の異なるRAID構成を組み合わせるが、通常はTeraStation ISでRAID 1またはRAID 5でデータ保護を、ダイナミックディスクのストライプ(RAID 0)で高速化を図ったり、スパンで容量を増加させる。これは複数ディスクの同時故障時の安全性を高めるために、なるべく下の段階でデータ保護を行うことと、PCのパフォーマンスを低下させないためにソフトウェアRAIDであるダイナミックディスクでは比較的負荷の軽い処理を行うことを考慮している。ちなみに、Windows Vista Ultimate/Enterpriseでもスパニングとストライピングに限り、iSCSIでダイナミックディスクを利用可能だ。
TeraStation ISは、大企業の部門サーバといった用途だけでなく、SOHOでの利用にもメリットがある。例えば、数人のスタッフがいるオフィスで、各PCのバックアップをとると考えてみよう。最も手軽なソリューションは、USBなどの外付けHDDをひとり1台ずつ用意することだが、ここでRAID 5で運用するTeraStation ISを導入し、1台を複数ボリュームに分割してそれぞれのPCに接続すれば、さらに快適かつ信頼性の高い環境を構築できる。また、ネットワーク経由で利用できるため、設置性の面でも有利だ。
RAIDのデメリットはRAID 1でも2台、RAID 5なら3台以上、RAID 10では4台のHDDが必要になるということ。例えば、3人のユーザーのバックアップ用に250GバイトずつRAID 5構成のHDDを使用する場合には、125GバイトのHDDを各3台ずつ、最低12台が必要となる。これに対して、TeraStation IS(250Gバイト×HDD4台の1Tバイトモデル)を導入すれば1台ですべてをまかなうことができる。
実際には、1人につき50Gバイト程度の容量があれば通常利用には十分であるから、1人あたり1万4000円弱のコストで、きちんとデータ保護されたバックアップ環境を提供できる計算だ。これはUSB外付けHDDと比較してもかなり安価なソリューションだし、ランニングコスト(消費電力)も小さい。そのうえ、転送速度の面ではNASに比べて高いパフォーマンスを発揮できるため、バックアップ用途以外にも、通常利用するデータドライブとして使うことができる。
このように、TeraStation ISを各個人用の外付けHDDの集合体として考えると、さまざまな利用価値が見出せるだろう。デスクトップPC1台程度のコストで導入できるTeraStation ISは、サーバ用増設ストレージの“第3の選択肢”として、ハイパフォーマンスかつ信頼性の高い環境を手軽に実現できる要注目の製品だ。
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提供:株式会社バッファロー
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年3月31日